EVERLAND SPEEDWAY 4.346km 2019.05.26(Sun) 30℃ 晴れ
8:30 メディアセンターに到着。すでに多くのメディアが席に着き,仕事を始めていました。日曜日のメディアセンターは,土曜に比べて人が多く,寝坊すると座る席がなくなります。遅くても朝9時までに入るのが私の中のデッドライン。まずは座席を確保し,パソコンとカメラを出して,予選の写真を整理しながら,昨日の記憶を蘇らせます。この日のブランチはスーパーレースさんが準備してくださったアイスコーヒーとチキンフィレサンド。朝のサーキットで飲むコーヒーは格別で,至福のひとときです。
9:00 ASA6000クラスウォームアップ開始25分前。気温はすでに26℃まで上昇していました。暑い一日の始まりです。
ピットに降りると,すでにドライバーはハンドルを握り,今にも出発しそうな状況でした。それにしても,まだ5月のレースだというのに,どのチームも冷風装置を持ち込んでいました。冷気を送るための太く長いダクトを窓から挿入し,車内を冷やしています。
9:25 さあ,いよいよウォームアップ開始です。
快晴の中,メインストレートを駆け抜けるASA6000クラスの車たち。朝のサーキットに鳴り響くエンジン音は最高です。
ウォームアップの結果を見てみましょう。上位10台のうち,韓国タイヤ9台,クムホタイヤ1台。クムホタイヤの最上位は7位チョン・ウィチョル選手(ECSTA RACING)1分55秒台後半でした。ウォームアップですが,韓国タイヤの圧倒的な強さが分かります。
次にチーム別を見てみましょう。1位,2位はSEOHAN GPの2台。1分54秒台後半です。3位,4位はATLASBX MOTORSPORTSの2台。1分55秒台前半から中盤。今シーズンはこの2チームによるチャンピオン争いになりそうです。
5位は第一製糖,6位はTEAM106。TEAM106は惜しくも予選2で敗退しましたが,タイムは決して悪くはなく,金曜日の練習走行から1分55秒台をキープしています。
12:00 グリッドウォーク。お天気にも恵まれ,多くの観客が来場しました。
今年からCJ SUPERRACEに合流したRadical Cup Asiaのドライバーたち。昨年から韓国で開催されたレースですが,すっかり韓国モータースポーツに定着したました。
韓国のレース場は,小さな子供を連れた家族連れが目立ちます。エバーランド・スピードウェイの場合は,隣に遊園地があるのも要因の一つですが,周りに何もない別のサーキットでも同じ光景を目にします。日本は車好きでマニアックなファンが多いのに対し,韓国はカーレースをイベントとして捉え,デジタルコンテンツを駆使したプロモーションにより,幅広い年齢層の集客に成功しています。下の写真1枚を見ても,子供が5人も写っています。
SUPERRACEのライブインタビューが始まりました。インタビューに答える選手たち。空を見上げるとドローンカメラが飛んでいました。
12:40 エンジンスタート(開会式)。「エンジンスタート」の掛け声と同時に,グリッドに並んだ車は一斉にエンジンを吹かします。
13:00 ランチタイム。メディアセンターで写真の整理をし,そのうちの何枚かをピックアップしてInstagramにUPしました。遠く離れた日本で,心待ちにしているファンのみなさまへの大事な作業です。
InstagramにUPした写真たち
15:00 ASA6000クラス決勝10分前。メカニックは決勝レースの最終準備に取り掛かります。
決勝レースに向けてマスクを被るポールポジションのキム・ジョンギョム選手。今回,ATLASBX MOTORSPORTS は,チームポイント2名のドライバーに,チョ・ハンウ監督と,キム・ジョンギョム選手をエントリーしました。エントリーから外れた柳田真孝選手は,開幕戦3位のハンディキャップウェイトがあるため,2名のドライバーより不利な状況です。前日の予選結果を見ても,キム・ジョンギョム選手とチョ・ハンウ監督は1・2フィニッシュをしており,チームとしては賢明な選択と言えるでしょう。
15:15 PIT EXIT OPEN 予定より20分遅れて開始。各車グリッドに向かいます。
15:20 グリッドに各車並び始めます。
グリッドに向かうと ”あれっ,何かおかしい” と気づきます。ATLASBX MOTORSPORTSが1番グリッドから3番グリッドまで先頭に3台並んでいました。
その後ろにいるはずの予選3位キム・ジェヒョン選手(VOLLGAS RACING TEAM)が見当たらないし,ECSTAの2台もいない。立ち止まり首をひねっていると,近くにいた知人が「ペナルティみたいよ」と教えてくれました。
それでも選手たちは気持ちを切り替えて戦闘モードに入っていました。スタート直前で緊張しているはずですが,選手たちの表情は楽しそうです。
15:40 メディアセンターに戻り,スタートを待ちます。フォーメーションラップの後,ローリングスタート。全車一斉に第一コーナーに飛び込みます。
スタート直後,予選2位のチョハンウ監督(ATLASBX MOTORSPORTS)は,後方からキム・ドンウン(第一製糖)に押し出され最後尾となり,波乱の幕開けとなりました。
その後,モニター越しにレース状況を確認しメモを取っていると,「72号車 TEAM106 PIT」の文字が映ります。チョ・ハンウ監督の接触映像が繰り返し放映され,TEAM106の状況がよく分からなかったため,直接PITに向かうことにしました。
TEAM106のピットに着くと,向かって右前輪を大きく破損した72号車が止まっていました。そして後輪も大きな損傷を受けています。
リュ・シウォン監督は,まだ車の中にいて,修理が終わるのを待っていました。メカニックは,後輪の修理に追われています。
素人の私が見ても「これは無理」と分かるほど破損状態は酷く,レースを再開できるとは,到底思えませんでした。そのような状況にもかかわらず,彼らはものすごいスピードで必死に修理をしていました。監督が車を降りない限り,彼らはレースを諦めようとはしませんでした。
長い間,SUPERRACEを間近で見てきましたが,ここまで真摯に取り組むメカニックを見たことがありません。前日の予選終了後,疲れ果てて机の上に寝ていた姿と,今,目の前で必死で修理をしている姿が重なり,一刻を争う緊迫した空気感の中,私は胸がいっぱいになってしまいました。
ふと気がつくと,その空気を察して,隣のピットにいたTEAM HOOKSの方が,冷風装置を持ち,72号車を冷やしていました。メカニックは総出で修理をしているため,灼熱の車内にいるリュ・シウォン監督に手が回らないのです。
(ライバルチームなのに)いいの?と私が尋ねると,TEAM HOOKSの方は少し微笑んでから,いいよと静かに頷きました。
その姿を見て,もうこれ以上,カメラを向けることができなくなりました。
メディアセンターに戻って,しばらくして,モニター越しにTEAM106のリタイヤを知りました。
決勝レースは続きます。ポールポジションのキム・ジョンキョム選手(ATLASBX)は,後続の選手に抜かれることなく,ポールトゥウィンで今季初優勝。2位にはチームメイトの柳田真孝選手(ATLASBX)が入り,2戦連続表彰台となりました。3位はジャン・ヒョンジン選手(SEOHAN GP) が入り,表彰台は韓国タイヤが占めました。
決勝レースの結果です。
1位から7位まで韓国タイヤが占め,クムホタイヤの最上位は7位ファン・ジヌ監督(CJ LOGISTICS)となりました。ペナルティによって後方からスタートした開幕戦2位のキム・ジェヒョン選手(VOLLGAS RACING)は5位に入る大健闘。また6位にはパク・ジョンジュン選手(JUNFITTED RACING)が入りました。
今回,決勝グリッドが大きく変わったペナルティについて簡単に説明します。ペナルティの原因は,消化器のピンを外さず車に搭載していたためです。この消化器のピンを外すルール,第2戦時点ではレギュレーションに反映されていませんでした。ただし,第1戦でピンを外すようオフィシャルから警告があり,第2戦でも守らなかったチームがペナルティを受けました。海外のモータースポーツにおいて,このような消化器ルールはなく,また,この時点でレギュレーションに記載されていなかったこともあり,ペナルティを受けたチームは警告の重要性を認識していなかったようです。エビデンスに未記載のルールについて,様々な意見はあるかと思いますが,審判が下した判定が全てであり,ペナルティを受けたチームも,今はこれを受け入れています。
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